寸法線を記入する際には、寸法を押さえたい二点をこちらが指定すると、オートキャド(AutoCAD)がその間の数値を自動的に記入してくれます。
しかしその数値の前後に文字を記入したり、あるいは寸法値自体を編集して文字を変えてしまう事も簡単に出来る、という話を前回は取り上げました。
これは実際にやってみると分かりますが、結構重宝する操作だったりするので、図面によってはかなり頻繁に使う事になるかも知れません。
ただ、普通の文字と寸法値とで同じ数字だったとしても、その数字の意味合いは少し違ったものになってくるんです。
そこを意識しておかないと、後で図面が良くない状態になってしまう可能性も。
という事で、今回は寸法値を文字編集する際の注意点について考えてみる事にしましょう。
とは言ってもそれほど難しい話ではないので、まずは寸法値に記載されている数値と文字として記入されている数値との違いを考えてみると…
通常の文字 → 当たり前ですが単純に数値であるだけ
寸法の文字 → 寸法を押さえている二点間の距離が自動で記入される
こうした違いがある訳です。
寸法の文字は寸法を押さえる二点とリンクした数値になっているので、数値だけを変えてしまうとそのリンクが切れてしまうという事を意味します。
前回も登場した図面ですが、扉の巾寸法が元々800だった状態を…
文字編集コマンドを使って900に変更した図面がありました。
上図を見ると扉の巾が900と記載されている訳ですが、実際のCADデータを計測してみると800になっている、というミスマッチが発生しています。
しかし誰もがCADデータを確認する訳ではないので、紙に印刷した図面での900が正解という事になってしまいます。
もちろん扉の巾900を正解としたいからこそ文字編集をしているので、結果としてはそれで問題はないのですが…
まずは正確な図面というか正確なデータではなくなってしまう、という部分が問題としてあります。
また、こうして寸法値を上書きした状態で寸法を押さえている点を編集したとしても、数字はもう自動的に更新されない状態になってしまう、という問題もあります。
これが最も危険な状態だと私は思います。
例えば扉巾を900とした図面で、扉の形状を大幅に変更した場合。
明らかに扉巾が大きくなったとしても、寸法は900のまま変化がありません。
これが作図している側の意図した状態であれば特に問題はないのですが、恐らく上図のような状態はあまり意図していないはず。
自動で記入してくれる寸法値を手動で更新してしまうと、それ以降は常に手動で寸法値を更新していく必要がある、という事です。
これでは正確な図面を維持する事が難しくなってしまうし、手動で寸法を毎回更新する手間がかかってしまうという面倒な状態に。
せっかく自動で寸法値を更新してくれるという、オートキャド(AutoCAD)の便利な機能を自分から放棄するのは勿体ない事です。
そうした事を考えると、やはり寸法値を手動で編集するという操作はあまりお勧め出来ません。
しかも、どの寸法線が自動で更新されない「手動数値入力」の状態になっているのかが、図面データをパッと見ただけでは分からない。
作図した本人は把握しているつもりでも、取り扱う図面の枚数が増えてくるにつれて、恐らくその把握も不正確なものになってしまうはず。
そうなると結局は間違っている図面を作図してしまうリスクが高くなるので、やはり寸法値自体を手動で編集することはしない方が良いという結論になります。